とんぺいJが新しくリリースしました!

東北大初「孫正義育英財団」に選出された学生。BioTechで持続可能な世界を。

東北大初「孫正義育英財団」に選出された学生。BioTechで持続可能な世界を。

今回のインタビューは、東北大学大学院生命科学研究科1年の石田光南さんです。岐阜県の高校を卒業後、ギター1つで名古屋で1年間弾き語り活動をした後に、琉球大学に入学。そこで植物細胞壁研究に出会い、研究に打ち込み4年時からは「孫正義育英財団」に在籍。東北大学大学院に進学後もアグレッシブに活動する彼に、その研究に関してと光南さんの過去に迫りました。ボリュームたっぷりの三部構成でお送りします!

細胞壁研究はエネルギー問題を解決する

ー今日はよろしくお願いします。光南さんは琉球大学から東北大学院に入学したと伺いました。

そうですね。今年の1月に仙台に来て、現在は論文に取り組んでいます。

論文の原稿自体はまだ書き始めていないのですが、今データをとっている段階です。年明けくらいに投稿したいんです。

ー卒業論文もう書いてるんですか?

実は東北大を1年半で卒業しようと思っているんです。というのも、現在PhD取得のためケンブリッジ大学へ出願しているんですが、結構いいところまで審査が進んでいる状況なんです。

もし最終的に合格した場合、来年の10月から大学にきてほしいって言われていて、早期卒業のため急いで論文を書いている状況です。

石田 光南

東北大学大学院 生命科学研究科所属。
岐阜県中津川出身。

岐阜県立恵那高等学校 理数科を卒業し、琉球大学農学部に進学。大学3年から1年間Michigan State Universityに留学し植物細胞壁の研究に励み、帰国後は孫正義財団に入団。
植物細胞壁の研究を継続するため、東北大学大学院に修士課程で入学。

ーすごいですね。植物細胞壁の研究自体はいつからやっているんですか?

琉球大学の学部3年生の頃ですね。

まず、細胞壁は何かってところと、なぜそれをやり始めたかってところをお話しした方がいいですよね?

ー気になりますね。 

細胞壁とは端的に言って、植物細胞の一番外側にある構造体です。

植物は細胞壁がすごく硬いし、また硬くも外環境に応じて緩めたりできるのです。また、細胞壁は物質的には、糖でできてると言われています。

僕はその糖を切ったり繋げたりする「タンパク質」を研究しているんです。​

引用 : 植物細胞壁

ー植物はタンパク質によって、細胞壁の形状を変化させていると?

そうですね。
この研究がなぜ大事かというと、植物細胞壁の研究は、「太陽からのエネルギーと地球のあらゆる生命活動を結びつけているもの」だからです。

地球でエネルギーを使うと、変換されてその過程でロスが生じますよね。

閉じた系でエネルギーを使っていたら、この地球上からどんどんエネルギーが少なくなってしまって、いつか地球はエネルギーのない世界になってしまいますよね。

でも実際に地球上からエネルギーがなくならないのは、地球が閉じた系ではなく、太陽からのエネルギーがたくさん入って来ているからなのです。

そのように常に太陽から地球上にエネルギーの入力がありますが、そのエネルギーを動物が使える形に変換しているのが、「植物の光合成」です。

植物が太陽のパワーを使って、空気中にある二酸化炭素を全て糖に変えて自身の細胞壁に組み込んでいるんですよ。
そこでその植物を草食動物が食べてエネルギーを獲得し、その草食動物を違う動物が食べるといった循環が起きているんです。
つまり先ほどいったように、植物が太陽のエネルギーと地球上の生命体の活動を結びつけているんです。

そこがすごく興味深いなと思ったのです。

ーなるほど、植物がないと我々は生きていけないですしね。
でもその植物細胞壁を変化させる「タンパク質」を研究すると、最終的に何ができるようになるんですか?

そこも大事なところですね。

簡単に言うと、私たちが抱えるエネルギー問題をすべて解決できるようになります

先ほど、植物はエネルギーの橋渡しをしているといったのですが、現在のままだとエネルギーのロスがあまりにも多いんです。
人間が食べてエネルギーにする分には大丈夫なのですが、それを電気や熱に変換させようとした場合には、火力発電や原子力発電のようにロスが多すぎるし環境にも悪影響を及ぼしてしまいます。
それをもっとクリーンな方向で「太陽からのエネルギーをダイレクトに変換する」というところが現在のバイオマス産業の課題なのです。

しかし、なぜそれが現在できないかと言うと、植物の細胞壁は植物自身も自分が分解されたくないので、複雑に作られているのです。

ですから、人間も簡単に植物を分解することができないので、酸やアルカリを使って強烈な処理を行うんですが、強烈な処理を行うものって大きなコストがかかってしまうんですね。

それを、カビや海の中にいる微生物などが持っているタンパク質で、「もっと植物の細胞壁を簡単に分解できるようにしよう」というのが、エネルギー研究における一番重要なところなのです。

植物にエネルギーを作らせて、それを簡単に分解できれば、僕たちのエネルギー問題は簡単に解決するはずだからです。

ー植物細胞壁ってそんなに重大なテーマだったんですね、、
そしたらもし研究がもっと進んで植物細胞壁を簡単に分解できるようになったら、植物からステーキ食べるくらいのエネルギーを獲得できるようにもなるんですか?

そうですよね。それはもちろんあります。

例えば、シロアリがなんでアリのくせに木を食べられるのかって疑問ですよね?

ーめちゃ疑問です。 

シロアリって、腸内に細胞壁を分解する酵素を持った微生物を飼ってるんですよ。

ーなるほど!そう言うことか。 

牛も同じように飼ってるんですよ。微生物との共生によって、細胞壁をダイレクトに食べられるようにしたのが、牛とかシロアリなのです。

人間も同じような形になるかはわからないですけどね(笑) でも、生活に足るエネルギーは植物からつくれると思います。

日本はバイオマス産業後進国

ーいま現在その技術はどの程度まで進んでいるんですか?

それが日本はかなり遅れているんです。

ーえ、そうなんですか?

日本の感覚だから、そんなのできるわけないじゃんってみんな思いがちなんですが、フィンランドやスウェーデンなどの北欧はかなり進んでいるんです。

それらの国は、家と家の間隔があまりに広いので、電線を張れないんですよ。ワイヤーを地面に埋めるだけの建設コストをペイできないから。

なので北欧では各家庭に1台、細胞壁を分解するマシンがあるんですよ。割った薪をそのマシンに入れると、マシンの中にいる微生物が薪を発酵させることでメタンガスを発生させるんです。

そのガスを変換して電気に変えたりしているんです。
つまり北欧だと、家の中にみんなバイオマス発電工場を持ってるんですよ。

ー本当ですか!日本では想像できない(笑)

そうなんです!日本では全然普及してないんですよ!

だから日本は環境意識がかなり低いんですよね、、

新しいものを大量に作って、使い倒して、捨てるって言うのが当たり前になってしまっているんです。100円ショップのプラスチック製品とかまさにそうじゃないですか。

ー確かに、、でも一般にバイオマスが普及しているって北欧かなり進んでますよね。研究もやはり進んでいるんですか? 

まさにですね。北欧は、バイオマス研究者の社会的地位がめちゃめちゃ高くて、市長とか大学の学長とかみんな細胞壁研究者なんですよ。

ーすごすぎ(笑)

そのくらい意識が全然違うんですよ!日本で細胞壁の研究してるって言っても「なんだよそれ」って感じだと思うんですけど(笑)

ー完全に無知でした、、(笑)

環境にも関わるし、バイオマスを使うっていうのはテクノロジーの最先端なんですよ。
科学の一番難しい問題で、そこに関わっている人は北欧ではかなり尊敬の対象になるんです。

ーいま日本だと基礎研究っていう位置付けなんですか?

そうですね。大学の研究者は結構頑張ってはいるんですけど、企業との連携とか行政との連携が全然うまくいっていないんです。。
電力会社やガス会社は日本では大きな利権を持っているので、「バイオマスに変えようよ」なんていうと反発を食らうわけですよ。

「絶対にやだ」って。
環境省もそれに懐疑的で、「今までそれを使わずともやってこれたからいいんじゃないの?」なんてスタンスで、全然普及してないんです。

ーなるほど、、なんかそれって日本やばくないですか?

やばいですよ!!

だから環境後進国なんです。北欧に限らず、EU圏全般に言えるんですけど、CSR(企業の社会的責任)の一環で「バイオエコノミー」っていう概念があって、企業が排出したCO2の分、自分たちで木を植えるようなオフセットの考え方が根付いているんです。

それが企業の株価にも影響を与えるくらい、当たり前なんです。

でも日本のCSRって全然じゃないですか?

ーちょろっと図書館に寄付するとか(笑)

そんな程度なんで、まだまだって感じなんですよね。。

だからそういったところも、行政的なテコ入れは絶対に必要なんですよ。

ーなるほど。。でも日本だと実用化までまだ時間がかかるイメージですね。

遠いんですけど、利点はすごくあるんです。

日本って陸地における森林の割合が7割くらいあるんですよ。それって北欧の国々に遜色がない、むしろ勝ってるくらいにリソースはたくさんあるんです。

それに加えて、優秀なバイオマス研究者もいます。

アメリカとか中国みたいに地面掘ったらガスが出てくるわけではないので、日本は限りあるリソースの中でどう循環させていくかってことを一番考えなければならないんです。

高齢化社会の問題に直面してテクノロジーがたくさん利用されてきているのと同じで、バイオマスもきっとそうなると思うので、この分野の人がもっと増えたらいいのになって思います。

この分野の研究をしている研究室は全国に12、13くらいしかないので。

ーかなり意識改革が必要そうですね。それだと、研究室と企業との共同研究とかもほとんどないんですか?

企業との共同研究は激ムズですね。

実際、そのレベルまでやってる人はほとんどいなくて、全然実用化までいけてないんです。

研究者の中でも、共同研究は諦めムードが漂ってしまっていて、どうにもならないから「パブリッシュできる研究をやろう」って流れになってしまっているのが現状です。

もちろん戦っている人もいるんですけど。。

ーそうなんですね。。

大組織とやりとりをするっていうのは、すごく労力もかかるし、ノウハウもないし、難しいんですよ。

ーそれ本当にまずいですね。。

そのうち、環境破壊が進んで森林も無くなってしまったら、この研究自体ができなくなってしまうんです。

そうなってしまったら、アメリカとか中国に法外な値段でエネルギー資源を売りつけられて買わざるを得ないって状況が起こらざるを得ないんです。

ー国レベルで考えると植物細胞壁の研究ってかなり改革が必要みたいですね。。

それとは別に、地球規模でこの問題を考えなければならなくて、人間は自然との均衡をこの21世紀に入ってから崩してしまっているんです。

人間による開発が進みすぎているんです。
でも人間も神ではないので、自然と一緒に生きていかないといけません。

だから、人間と自然とのバランスを均衡のポイントまで戻すっていうこともバイオマス研究者の使命なんです。

ー完全に人間が崩してますよね。

だから時間の問題ですね。人間も増えすぎていますし。

深刻な日本の研究者事情

ー日本のバイオマス産業の状況が現在の北欧に追いつくまで何年くらいかかりそうなんですか?

うーん、20年くらいはかかると思います。すごく難しいんですよね。

ーその20年というのは、今の国と企業の姿勢が変わらない限りはってところなんですか?

そうですね。今のジャンダーの問題にも近いと思うんですが、海外が言い始めて圧をかけられてやっと動くのが日本が大きくシステムを変える瞬間だと思うんです。

グローバルスタンダードが固まりに固まったところで、やっと日本には効くのかなって思います。

ーそれめちゃめちゃ悲しいですね。。もうどうすれば日本って変わるんですかね?声を大にするしかないのかな。

そうですよね。そういった影響力を持ちたかったら、研究者としても傑出しつつ、行政にも仲間をたくさんつくって、自分で変革を起こしていくっていうことですね。

もしくは、「もう日本はどうにでもなれ」って海外に出て行くかですね。
でも、日本で頑張って行くとしたら、キャパシティーの問題にもなると思うんですよね。どこまで自分一人で抱え込めるかっていう。
でも、僕はしばらくは海外で頑張ってみようと思っています。

ー光南さん行っちゃうんですか、、、

(笑) 一応PhDは海外でとるんですけど、自分が独立するまでは海外でやって行こうと思っています。

ー優秀な人はみんな海外行っちゃいますよね。。

でも、頭脳流出ってわけでもないと思いますよ。ただ海外の方がチャンスがたくさんあるんです。それっていうのも、やはり科学予算が全然違うんですよ。

日本って文科省が分配してる予算って年間2000億円なんですよ。2000億円って多いような感覚になりますけど、アメリカだとGoogleとかAmazonとかがリサーチに使ってる予算が年間2兆円なんです。
1企業と1国で10倍違うんですよ。
それくらい日本はチャンスをとってきづらいんです。

ーそうですよね。研究者も自分で資金調達ってなかなかしないですしね。。

そうなんですよ、なかなかできないんですよ。

ー研究者の資金調達が難しいのは何がネックなんですか?東北大の教授たちも研究室の資金調達に困ってるって聞いたので。

うーん、お願いベタなんじゃないですか。周りにやってる人が少ないからやらないんじゃないですかね。

あと、東北大にいるとまだいいですけど、地方大に行くと論文書かない教授も腐るほどいるんですよ。

日本の論文数はここ数年伸びていない(引用

ーやば。。

これはやばいです(笑)。これも地位に甘んじてしまっているというか、研究者の教育が大学院課程できちんと行われていないっていうのがすごい問題なんですよ。
なんでかっていうと、いい研究者になるってことはいい経営者になるってことと基本的には素質として同じなんです。

自分はこういう研究ができますってアピールして「お金を調達する力」と、実際に「研究をする力」と、その研究を「広報して次に繋げる力」の、3つの力が必要なんです。
これを研究者はPhDを取るまでにトレーニングしなきゃならないんですけど、日本は研究室に入ったら後はほったらかしにされることが多くて、2番目の「研究をする力」しか鍛えられないんですよ。

だから、ファンドをとってくるのがどれだけ重要かとか、そのテクニックとか、広報の重要性とかを誰も言ってくれないんですよ。
でも、みんなそれでいいだろうと思ってしまうから、現状にいるような研究者が増えてしまうんですよ。
それが多分1番の問題です。

研究者に必要なスキル(筆者作成)

ーなるほど。。

だから僕は西谷先生を慕っているわけで。

ー今いる研究室ですよね?

そうです。西谷先生は先ほどの研究者に必要な3つの力を全て指導してくれるんです。

ーそれはすごくいい!

ぼく今年度500万円自分の研究費を調達したんですけど、それも西谷先生が自分の科研費の応募書類とかをくれて、「こういう風に書くといいよ」ってアドバイスをくれたり、プレスリリースの仕方を教えてくれたりとか。

そういうことができる指導者ってなかなかいないので。

ーへえ、、西谷先生何者ですか?(笑)

哲学者って感じですね(笑)

先生はずっと植物細胞壁を研究しているんです。ただ西谷先生もすごい名門の出というか、今の細胞壁研究者のドン達はみんな大阪府立大学出身で、みんな増田先生という方の元で研究を教わっていた増田門下なんですよ。

そこで学んだ人達が、今爆発的な影響力を誇っているんです。

ー江戸時代の塾みたいですね(笑)

そんな感じですよ。
西谷先生はドクター出さないことで有名なんですよね。行ってもしょうがない人間を院進させないということを徹底していて、これまでまだ八人しかドクター出してないんですよ。

今年65歳になるんですけど。

ーすごい。

ただそこで西谷門下でドクターをとった人は皆さん活躍してますね。

東北大学植物細胞壁分野 ( 通称:西谷研究室 ) 自体では大きく分けて2つのプロジェクトが進行しています。

1つ目が「寄生植物の生理学」です。
他の植物に寄生して、栄養を横取りする植物を寄生植物と呼ぶのですが、その植物がどのようにして宿主を認識しているのかということや、どうやって自身の都合のいい環境を見つけるのかという事を明らかにしています。

もう1つのプロジェクトが「キシログルカンつなぎ変え酵素の研究」です。
この酵素が細胞壁の制御を担っていると考えられていますが、1つの植物の中に30も40も種類があり、役割分担をしながら働いているのでそのメカニズムを解明するのが難しいところです。

僕はこの酵素のプロトタイプであるエンドグルカナーゼ16というものがゼニゴケの中でどのような機能を担っているかという事を明らかにしようとしています。

西谷和彦教授(引用
→西谷研究室の詳細はこちら

東北大学から初の「孫正義育英財団」

ー光南さんは孫正義育英財団に入っているとも聞きました。

そうですね。
財団の話もした方もしたほうがいいですよね。財団自体は、ソフトバンクの孫正義さんが日本の天才を育てたいということで2年くらい前に始めたそうです。

今現在150人くらいの財団生がいます。
半分以上が海外の大学院で、残りの半分が東大、慶応とかです、東北大は多分ぼくだけです。

とにかく日本人にこだわらず天才を支援したいっていうことで、ボストン・カリフォルニア・渋谷・ロンドンに財団生用のシェアハウスもあるんです。
これは「天才同士の交流を促進したい」という狙いがあるみたいで、実際みんな飛び抜けて優秀ですね。

研究に関するお金とかも惜しみなく支援していただいてます。

ーすごい。。孫正義財団はどういう経緯で入ったんですか?

一応、自分で応募するんですけど、それを事務局の人が選抜して行くなかで面接も同時に行っていって、孫さんの他にも山中伸弥さんとか羽生善治さんとかが面接官できていました。

ーやば(笑)

やばいですよ。審査期間も長くて半年とかかかるんでんすよ。それに当たると5000〜6000万円の資金を得ることができるので、人生をかけた一大勝負でした。

ぼくも緊張が極度に達していて十円はげが6個できましたね(笑)
そのくらい追い込まれるし、他の人たちのプレゼンを聞いて劣等感もすごく感じてたんです。
生物オリンピック金メダルとか、数学で賞をとったとか、ザラにいるんですよ

ーすごい。。入ってから変わったことはありますか?

そういう人たちと会うきっかけをすごい作ってくれるんです。

毎週のように渋谷でイベントがあって、普段会えないような人たちの講演が聴けたりとか、普段会えない人たちのワークショップ受けれたりとか。
実際に財団生と話す機会も多いですし。

その中での大きな変化は、「ケンブリッジくらい行って当たり前だよね」っていうマインドになったことですね。
財団生はみんなやはりすごく優秀で、ケンブリッジやオックスフォードに通う学生もたくさんいたので、イギリスのトップスクールに通うことが特別じゃないなって感覚を、良くも悪くも抱かされました。
「手が届かないところなのかな」って思ってたんですけど、実際5月にケンブリッジに行ってみて教授と話したり、ラボの様子を見たりしてきたんですが、「意外と自分たちがいまやっている研究の延長線上にあるな」って思えて、全く別世界じゃなかったことは自分にとって手触り感が得られた大事な気づきでした。

孫正義育成財団(引用)

ーそうなんですね。財団の優秀な人達のコミュニティーに入れるってかなり大きそうですね。

最初は財団の他のメンバーに対して劣等感をすごく感じていましたね。
やっぱりみんな経歴が華々しいんですよ、ハーバードとかケンブリッジとか海外の大学に通ってるし、国際的な受賞歴とかもあるし。
僕は琉球大学だし、大した賞を受賞してきら訳でもなかったし。

でも、そういう人達って「どこの誰なのか」っていう肩書きなんて全く気にしてないんですよね。
問われるのは、「その人が今何をやって、どういう未来を描いているのか」っていう、それだけなんです。
その中でちょっとずつ自信が出てきたっていうのが正直なところですね。
マウンティングしたいなんてやつ一人もいないんですよ(笑)

細胞壁研究者との出会い

ーそもそもなんですが、どうして植物細胞壁の研究をしようと思ったんですか?

研究自体を始めたのは、琉球大学の3年生の頃です。
19歳くらいから「人生において、一つ自分が登る山を見つけないといけないな」と漠然と思ってて、何に命をかけてみようかと色々探していたんです。

ー19歳の頃何があったんですか? 

うーん、先輩が死んでしまったりとか、色々あったんですね。
そこで、「人間っていつか死ぬんだな」みたいな虚無感がすごくあったんです。自分が生きてることなんて大したことないなと。

地球史からしてみたらほんの一瞬のことですし。自分のことを知っている人も200人くらいしかいないし。
「いつ消えても意味のない命だな」って。
「でもかといって死にたいとは思わないな」、「じゃあ何か自分の生きた足跡を残してみたいな」なんてことを思ったんです。
そんな時に、集中講義で他の大学から細胞壁の研究をしている方が、琉球大学にきて講義をやっていたんですよ。

彼は細胞壁を心底愛していて、「細胞壁を研究することこそが人間を救う一番いい道だ」ってくらい、確信を持って細胞壁研究をやってるように見えたんです。
そこまで熱量高く細胞壁の研究をしている人に初めて会って、「めちゃめちゃかっこいい、細胞壁研究ってなんだよそれ!」って、強烈に研究者がカッコよく写ったんです。

そこから興味をもって細胞壁を分解する酵素の研究をしてみたいと思ったんです。最初はもちろん、研究でご飯を食べられるようになろうとは思っていなくて、まずはちょっとやってみようかなって感じでした。
そこで勉強しているうちにすごく好きになっていったんです。そこで、研究室も植物細胞壁の分野に進みました。

実際就職活動も行ったんですが、自分に研究と就職どちらがいいかを天秤にかけて考えてみた時に、やっぱり大学院に行って研究を続けると決めました。

ギターを持って名古屋へ

ー光南さん、これ聞いた話なんですけど、高校卒業後にギター1つだけもって家を飛び出したって聞いたんですが(笑)

(笑)

ーちょっと詳しく聞いてもいいですか?(笑)

いや何もないですよ(笑)
それは、なんか若気の至りみたいなもので、細胞壁全く関係ないですし(笑)

高校3年生の頃に、岐阜県の自称進学校にいたんですけど、当時は恐ろしいくらい情報がなかったんですね。成績に応じて名古屋大学、岐阜大学、それ以外の国公立大学、私立大学というような進路選択が当たり前でした。

僕の両親は高卒で、彼らも「医学部にいけるんだったら行ったほうがいい」ってすごい勧めてきたんです。
そんな中で、みんなと同じように進学校にいくことがなんとなく嫌だったんですね。

ーふむふむ。

そこでギター1つもって家を出たんです(笑) センター試験も受けずに(笑)

ーぶっ飛んでますね(笑)

それで岐阜からでれる都会って名古屋しかなかったから、名古屋に行ったんです。
1年間名古屋で遊びながら過ごしていました。その間にギターを練習して、ライブハウスで演奏したりもしていました。

それでも、当時お金もなかったしかなり辛くて、
「この生活もそんなに長くは続けられないな」
って思ったんです(笑)。

光南さんの高校時代(最前列の左から5番目が光南さん)

ーほお(笑)

楽しかったですけどね。
そんな時にパッとテレビつけてたら、沖縄の番組流れてて。

そのとき僕の目にはテレビでみた沖縄がすごくいい所のように映ったんです。そこで「沖縄行く方法ないかな」って考えていて、「あ、大学っていう手があるじゃん!」って気づいて琉球大学を選んだんです(笑)

1年遅れて名古屋大学に入るのは自分のプライドが許さなかったし、学歴なんてどうでもいいって思ってたので。

​人間以外の生物にも優しい地球を

ー大学1年生の頃は何をやってたんですか?

そこが多分一番猛烈に勉強した時期ですね。
朝8時から夜10時までずっと図書館で勉強するっていうのを1年間1日も欠かさずやったんですよ。
そこで大学4年間分のことを全部自分で勉強して、「これで大学はもう十分だな」って思ったんです。それで、大学2年生の頃はバイトと学生団体に明け暮れてたんですね。

そこが1段落してからは、「留学に行こう」って思って。
当時2年生の終わり頃には細胞壁を研究することは決めていたので、教授に細胞壁研究をやっているアメリカのミシガン州立大学を紹介してもらって、3年の春から1年間アメリカで研究をしていました。
そこから帰国して、卒業研究を終えてから東北大学にきたっていう流れです。

ー光南さんの人生面白すぎますね(笑)

本当に(笑) 何があるかわかんないですよね。

ー今後の展望とかありますか?

まずはイギリスで学位を取って、ポスドクを何年かやってから自分で独立して、ヨーロッパで「Ishida lab」っていうラボを開きたいです。
どういう研究をやっていくかは色々やりたいことがあるんですが、ラボの雰囲気としては世界中の学生を受け入れたいと思っています。

僕自身アメリカの教授にすごく良くしてもらったっていう想いがあって、日本は比較的先進国だからまだいいんですけど、東南アジアの国々とか途上国の学生にも留学のチャンスを作れるようにしたいと思っています。
その中で、自分のラボを通して次の研究者が育っていくような、いい循環というか、西谷先生とか増田先生のように受け継がれてきたものを次の世代にも渡したいなってすごく思っています。

ーそういういい研究室に恵まれたんですね。

すごく運が良かったと思います。
それから大きところで言うと、人間以外の生物に優しい地球になるといいなって思います。

今みんな人間が住みやすい地球にしようと注力しすぎなんですよ。でもそれは、人間がこの世で一番偉いって考えに根ざしてるからよくないと思うんです。
それから皆便利さを求めすぎている中で、人間の知能は衰えてきていると思うんです。
別に僕たちが賢いからスマホとかPCを使える訳でもないし、そう言う技術がたまたまあったから僕らが使えるだけであって。

昔の人って教科書一冊暗記するとか普通だったんですよ。でも僕らは今そのぐらいの記憶力って全然ないじゃないですか。集中力は続かないし、ストレスはかかりすぎてるし。

技術にかまけて脳が死んできていて、人間が自分たちで作ったもののせいで、人間自身が育たなくなってくているって言うのが今の人間社会だと思うんです。
人間がこのまま資源を食い尽くしたり、人間自身が育たなくなってきていることによって、どんどん人間という存在自身が下降の一途を辿っていくだろうなって思ってて。
そういう状況になりつつあるので、いいバランスで人間とその他の生命と共存できるように考えなきゃならないと思います。

ー最後に東北大学に言いたいことがあれば。

うーん(笑) 研究者の待遇を改善して欲しいですね。

東北大学って研究者は任期付きばっかりなんですよ。
教授は割と任期がないんですけど、准教授とか助教授って、5年間とか雇用期限が決められて雇われているんですよ。
みんなその任期のうちにいい仕事を探さないとって焦っちゃうんですよね。そういうシステムはよくないと思います。

旧帝国大学でまだ任期付きなのは東北大学だけですし。ちょっと前までは名古屋大学もそうだったんですけど、最近無期雇用に転換したので。東北大が一番待遇の悪い旧帝国大学ですね。

ーえ、なんでそういうことが起こっているんですか?

多分予算がないんだと思います。人を雇い続けるだけの。

ーやば(笑) 切実じゃないですか!

切実ですよ(笑)
でも研究大学なんだから、研究者の待遇は改善して欲しいですね。

ー学生には何か言いたいことはありますか?(笑)

僕も学生ですけどね(笑)
うーん、、

でもみんな大人しいですね。ディスカッションでバチバチになることって全然ないんです。

ーディスカッション文化ないんですか?

ないですね。同学年が100人いるんですけど、東北大から上がってくる人が50人、他大から上がってくる人が50人くらいなんですね。
でもすごく距離感があるなって感じてしまいます。

ーそこ混じり合ってないんですか?

混じり合ってるはずなんですけど、実際人の交流はほとんどないんですよね。
なので、いろんな人とディスカッションをしましょうって感じですね。

ーそれ大学生へのアドバイスじゃない(笑)

ディスカッションによって自分の価値観が揺さぶられるっていう経験があまり詰めないからなのかもしれないですね。
実際人と会わないと自分の考え方って磨かれていかない気はしますけどね。

あと、東北の人って東北大学生なだけで偉いと思ってるので。

ーあ、それあるかも(笑)

その感覚は違うなって(笑) だって東京行くだけでも東北大学って言われたら知らないって人多いですからね。
誇りを持つってことはいいことだと思いますけど、変なプライドを持ちすぎないほうがいいと思います。

ー胸が痛い(笑)今日はありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました!

グローバルカテゴリの最新記事